17.7.22 栃木県立美術館

 栃木県立美術館は、社会における美術の位置を科学理論との対比から再考する試みとして、2011年以降ふたつの企画展を行ってきた。

 

7月15日から開催されている「2D(にじげん)プリンターズ 芸術:世界の承認をめぐる闘争について」展では複製技術などの発達により改めて生じた「芸術による有用性とはなにか」を問い直している。

 

複製技術が利用されている作品と絵画や彫刻などといった"手わざ"による作品の両方を展示することで複製のあり方や美術における価値についてを考えさせるものになっていた。

 

 

わたしにとってこの展示テーマは、自身の考えている「作品を見ることの意味」という問題に限りなく近いものであり、なにかを得られるのではと感じて足を運んだ。

 

はじめて訪れた栃木県立美術館は、宇都宮駅からバスで15分と少し離れていることもありどこか浮世離れしているように感じられた。

そんな場所だからこそ芸術の有用性という、古典的かつベーシックな問いを改めて取り上げることができたのではないだろうか。

 

 しかし展示のコンセプト自体は明確であり魅力的なものである一方で少し物足りなさを感じたのが実際のところだった。

キャプションのばらつきや全作品撮影禁止であること、そしてそれらの理由が不明であることが妙につっかかり、本当にこのコンセプトにふさわしい形であるのかとかなり考えさせられた。

わたし以外にも解説をもとめている鑑賞者がいたが、そもそもスタッフが展示会の意図について理解しているかどうかのレベルであり、全体的に説明不足を感じられる展示で残念に思った。

鑑賞者に解釈を委ねたところもあるだろうが、扱っている問題が問題なだけにより多くの人に伝わるような方法があったのではないだろうかと感じる。

 

現代の美術において複製の価値が上がったのは言うまでもないが、それはオリジナルの価値と同等になったのではなく同時にオリジナルの価値を下げたようにも思えた。

この展示では複製とオリジナルを並べることでその両方の価値を共に考え直すという挑戦がなされていたが、その価値のあり方が今後どのように向かって行くのかはわからないまであり、鑑賞者である我々の受け取り方が問われているだろう。